論理回路の問題を、論理回路シミュレータで試す(大学入学共通テストの試作問題から)

令和7年度から情報Ⅰが共通テストに含まれることが決まっています。どんな問題が出るか、どんな勉強をしたらよいか、気になるところです。

先日(2022年11月)、大学入試センターから、共通テストの試作問題が公開されました。

令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等|大学入試センター

 情報Ⅰの問題を見ると、4つの内容(情報社会の問題解決、コミュニケーションと情報デザイン、コンピュータとプログラミング、情報通信ネットワークとデータの活用)から、広く出題されていることが分かります。

この記事では、「コンピュータとプログラミング」の内容から、「論理回路」の問題について取り上げます。

※本記事の公開時、「サンプル問題」と表記していましたが、正しくは「試作問題」でした。お詫びして訂正いたします。

『情報Ⅰ』教科書での論理回路の説明

 教科書の中では、論理回路はコンピュータの仕組みを説明する箇所で出てきます。
コンピュータは2進数の演算をしており、その演算は論理回路の組み合わせで行っていることが説明がされます。あわせて論理回路の回路図記号や、真理値表が示されます。

例:論理回路の回路図記

AND回路・OR回路・NOT回路の図記号

例:AND回路の真理値表

AND回路の真理値表
入力1 入力2 出力
0 0 0
0 1 0
1 0 0
1 1 1

論理回路の問題

 試作問題の中では、「コンピュータを構成する部品としての論理回路」という視点から論理回路を見るのではなく、「論理回路を使うと論理演算ができる」という視点からの問題になっています。

 具体的には「旅客機の中の複数のトイレと、その使用状況を知らせる1つのランプ」という設定です。

問3の設問(1)では「2つのトイレがあり、両方が使用中のときにランプが点灯する」、 設問(2)では「3つのトイレがあり、3つのうちどれか2つが使用中のときにランプが点灯する」という振る舞いを、論理回路部品の組み合わせで実現する方法が問われています。

 「高度な論理演算を実現する、複雑な論理回路の組み合わせ」というよりも、「現実の問題を解決する手段として、論理回路が使える」という方向性で作られているように思います。

あんこエデュケーション > ツール > 論理回路シミュレータ

 アシアルが運営するWebサイト「あんこエデュケーション」では、論理回路をシミュレーションできるツール「論理回路シミュレータ」を公開しています。

 上記のページには、論理回路シミュレータへのリンクのほか、動画による操作説明もあります。動画には、AND回路、OR回路、NOT回路の動作を説明するものもありますので、教科書の説明の補足にもお使いいただけます。

論理回路シミュレータで、論理回路の問題を試す

 論理回路シミュレータで、試作問題に取り組んでみましょう。

 問3 設問(1)は、2つのトイレ(トイレA、B)につき、それぞれ使用中なら1を、空いているなら0を回路に入力するとしています。2つの入力の両方が同時に使用中の場合に、出力Xを1にする(=ランプを点灯させる)には、どの回路・回路部品を置いたらよいか問うています。

 設問の図を論理回路シミュレータで再現すると、次の図のようになります。

 ランプは、右端にLEDライトを置いて再現しました。入力A,B(=トイレの使用状況)を、中央に上下に並べた2つのトグルスイッチ(Toggle)で再現しています。論理回路シミュレータは、電源が無いと回路が動作しないので、左端に電源(DC)を置き、2つのスイッチと接続しています。

 設問は、「2つのスイッチとLEDの間にどんな回路を置いたら、入力が2つとも1(オン)のとき、出力が1(オン)になるか」を問われているわけですから、答えは次のようになります。

 AND回路を置けばよいわけです。
 論理回路シミュレータは、回路図を描くだけでなく、実際に動作させて試すことができます。2つのスイッチで、トイレA、Bの空き状態を変え、ランプが点くか消えるか、確かめてみましょう。

 両方オフ(両方とも空き)の場合、ランプはオフになっています。

 下だけオン(下だけ使用中)の場合も、ランプはオフです。

 上だけオン(上だけ使用中)の場合も、やはりランプはオフです。

 これで、「両方とも使用中のときにだけ、ランプを点灯する」という動作を確認できました。

 設問(2)についても、同様に、論理回路シミュレータで試すことができます。

 出力がつながっていないOR回路とAND回路の先に、どの回路につなげるとよいでしょうか。
 設問では、「3つのトイレのうち、2つ以上が使用中になったら、ランプで混雑を知らせる」とされています。これは、「3つのスイッチのうち、2つ以上がオンなら、出力もオンにする」というふうに読み替えることができます。さらに、これは「3人で行う多数決」の回路ともいえます。

 では、設問の回路を上から順に見ていきましょう。
 一番上のAND回路は、上・中の2つのスイッチの両方がオンのとき、出力がオンです。
 真ん中のAND回路は、中・下の2つのスイッチの両方がオンのとき、出力がオンです。
 この2つのAND回路のどちらか一方でもオンなら、3つのスイッチのうち2つのスイッチがオンであるということなので、右端にはOR回路が置かれています。
 一番下のAND回路は、上・下の2つのスイッチの両方がオンのとき、出力がオンです。

 回答を選びましょう。
 OR回路の出力か、下のAND回路の出力のどちらか一方でもオンなら、3つのうちどれか2つのスイッチがオンであるということになるので、答えはOR回路になります。

動作を動画で示します。どれでも、スイッチが2つ以上のオンになっているとき、LEDがオンになることを確認してみてください。

 今回紹介した論理回路シミュレータをはじめとして、アシアル情報教育研究所ではMonaca Education以外にも、情報Ⅰ・共通テスト対策の学習の役に立つツールを提供しています。

例えば、大学入学共通テスト手順記述標準言語(以下、DNCL)の実習教材「WaPEN@Asial」を2022年度中はβ版として無料提供しています(高校の先生限定)。

WaPEN@Asialの紹介 | Monaca Education

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