ブロック崩し Python(Brython)版

Monaca Educationで新規プロジェクトを作成するときに、「ブロック崩し」を選択することができます。プロジェクトの作成、プレビューの利用、ソースコードの編集・保存など、Monaca Educationの基本操作に慣れる機会として利用できます。このプロジェクトのテンプレート「ブロック崩し」は、JavaScriptでコーディングされているので、JavaScriptの学習用教材としても使えます。

今回、Python(Brython)版を作成したので、紹介します。

なお、本プログラムは、BrythonのWebサイトのギャラリーページ( https://brython.info/gallery/gallery_en.html )にある「2D bricks game」のソースコードを参考にして、作成しました。

ブロック崩し Python(Brython)版のインポート

下記のボタンから、ブロック崩し Python(Brython)版をMonaca Educationにインポートできます。

Monaca Educationにブロック崩し Python(Brython)版をインポートする(要ログイン)

注意:下記で紹介しているのは、一般的なPython環境で動作するブロック崩しゲームプログラムではありません。Brython環境(※Webブラウザ上で動作する、JavaScriptによって実装されたPython実行環境)で動作するブロック崩しです。HTML Canvasなど、Web技術を利用して実現しているので、一般的なPython環境に移植することは簡単ではありません。

Monaca Educationにインポートして、参照・利用してください。

プログラムの概要

プロジェクトの中のindex.htmlと、python.pyが、ブロック崩しプログラムの実体です。

index.html

index.htmlの中には、タグ<img>と、タグ<canvas>を記載しています。

タグ<img>で、画像ファイルを読み込んでいますが、同時に「display:none」というスタイルを指定することで、表示はしないようにしています。ここでは画像を読み込むことだけ行っています。画面の背景に表示する処理を、python.pyの中に記述しています。

タグ<canvas>は、HTML Canvasを用意するタグです。このキャンバスに絵を描くことで、ゲームとしてのビジュアルを実現します。キャンバスの幅と高さを指定するとともに、ID属性を使って”myCanvas”という名前を付けています。python.pyのプログラムの中から、この名前”myCanvas”を指定して、画面に画像を表示させています。

python.py

python.pyが、ブロック崩しプログラムの本体です。コメントを含めると300行ほどのプログラムです。

以下では、全行の解説はせず、概要を説明した上で、いくつか簡単なカスタマイズ例を紹介します。

python.pyの概要

以下のpython.pyの説明は、いったん読み飛ばしても大丈夫です。次の節で、簡単な例を示していますので、カスタマイズに興味のある方はそちらをご覧ください。

要素の大きさや動作の設定:プログラム冒頭(23行目)から54行目まで

ブロック崩しの動作を左右する変数を定義し、値を設定しています。ブロックの配置や、ブロックのサイズ、パドルやボールのサイズなどを決めています。また、ボールの動き(加速度や、ボールがパドルに当たったときの跳ね返りの振る舞い)を決めているのも、この部分です。

ブロックの情報:57行目から62行目まで

ボールを当てて崩す「ブロック」についてのプログラム部品です。

この部分で、ブロックは、ブロックを表示する座標(X、Yの値)と、状態(ブロックがある・表示されているのか、崩されてない・表示されていないのかを表す。値が1ならブロックがある・表示されている状態)の情報を持つように作られています。

ゲームの本体:65行目から263行目まで

ここが、ブロック崩しゲームの本体です。

67行目〜78行目:画面上の様々な要素を初期化(※ゲーム開始時点の状態にする)しています。

82行目〜95行目:ボールの位置を初期化します。ゲーム開始時と、ボールを落としてしまって再開する時に、呼び出されます。

98行目〜122行目:ボールがブロックに当たったか判定します。ボールのX座標・Y座標の値を、すべてのブロックのX座標・Y座標の値と比較しています。ブロックに当たっていたら状態を変え、また得点を付けます。すべてのブロックを崩し終わったらゲーム終了ですが、その終了処理もここに記述されています。

125行目〜130行目:背景色を設定できます。今回公開しているサンプルプログラムでは、背景画像を上から貼り付けているので見えませんが、色を指定することができます。

133行目〜135行目:背景画像を設定しています。index.htmlのタグ<img>で読み込んだ画像を、ここで利用しています。

138行目〜147行目:ボールを描きます。指定された座標(X、Y)に、設定された半径の円を描き、色を指定して塗りつぶしています。

150行目〜161行目:パドルを描きます(※パドルは画面下にあって、マウスや矢印キーで操作する棒です)。指定された座標(X、Y)に、幅と高さを指定して長方形を描き、色を指定して塗りつぶしています。

165行目〜183行目:ブロックを描きます。二次元配列で管理されている全てのブロックの情報に、二重ループでアクセスします。ブロックの状態が1のもの(=まだ崩されていないもの)について、座標(X、Y)とブロックの幅・高さを指定して長方形を描きます。

別の二次元配列(※29行目から35行目)で管理されている、ブロックの色の情報を使って色を指定し、塗りつぶしています。

186行目〜191行目:得点(スコア)を描きます。フォントや色を指定した上で、指定された座標に文字列を表示します。ソースコードの中に{self.score}という書き方がありますが、これは「変数の値を出力する」という意味です。

194行目〜199行目:残機の数を表示します。ゲーム開始時は、2回まで失敗できるようになっています。3回失敗するとゲームオーバーです。得点の表示と同様に、フォントや色を指定した上で、指定された座標に文字列を表示します。

204行目〜263行目:この関数draw()こそ、ゲームの動作の要です。1秒間に数十回、この処理が呼び出されることで、ゲームが動作しているように見えるのです(ボールやパドルが移動する。ボールが当たったブロックが壊れる)。上の行で定義された処理(関数)が呼び出され、ブロックやボール、パドル、スコア、残機が表示されます。ボールが壁や天井に当たったことの判定、ボールが床に落ちたかどうかの判定も、この部分で定義しています。

関数の定義の最後に、window.requestAnimationFrame(self.draw)という記述があります。これは、「次に画面の表示を刷新するとき、draw関数を呼び出しなさい」という意味です。この記述のおかげで、パラパラ漫画のように、短い時間に画像が更新されて、動いているように見えるのです。パラパラ漫画と違うのは、パラパラ漫画は「あらかじめ紙に描いておいた絵を使う」のに対して、ゲームは「一瞬ごとに絵を描いて、表示している」というところです。

269行目〜最後:プログラムの以上の行は、関数やクラスを定義しています。最後の30行余りは、定義した関数やクラスを呼び出して、ゲームを動作させています。

なお、276行目から294行目は、キーボードのキーを押す・離すイベントに応答する処理を定義し、イベントと関連付けています。@bind(document,”keydown”)という記述は、「イベントkeydown(キーボードのキーが押された)が起きたら、この関数keyDownHandlerを呼び出すように、束縛する(bindする)」という意味です。

最後の306行で、画像の描画(draw)を開始しています。ここからは1秒間に数十回、drawが呼び出されるという動作になります。

カスタマイズの例

ボールを大きくする

37行目にある変数ballRadiusは、ボールの大きさを決める値です。数を大きくすると、ボールが大きくなります。

下記の画像の例では、値を50にしました。

※なお、ボールを大きくし過ぎると、ブロックとの当たり判定の問題で、ゲームがクリア出来なくなります。

パドルの幅を広くする

ゲームを易しくするには、パドルの幅を広くするのが一番です。

39行目の変数paddleWidthの値を大きくすると、パドルの幅が広がります。

下記の例では、paddleWidthの値を200にしてみました。画面幅の大半がパドルになるので、ゲームをクリアするのが簡単になります。

様々なカスタマイズを試してみてください

このブロック崩し Python(Brython)版は、ゲームのプログラムとしては比較的少ない行数で出来ています。

この記事の冒頭のボタンから、Monaca Educationへインポートできます。

様々なカスタマイズを試して、ぜひ、オリジナルのブロック崩しを作ってみてください。

参考:【スターターキット】ブロック崩し(JavaScript版)を利用した2コマの授業

アシアルは、新規プロジェクトのテンプレート「ブロック崩し」(JavaScript版)を使って、2コマのプログラミングの授業を実施するための教材を公開しています。

下記のリンク先のページで各種教材・資料をダウンロードできます。ぜひご利用ください。

※ブロック崩し Python(Brython)版の教材は、現在制作検討中です。

スターターキット サポートページ