【データを分析して、謎を解こう】決まった目が出やすいサイコロ?
確率的に起きる現象について、データの分析の手法を使って、謎を解いてみましょう。
といっても、難しい話ではありません。目の出方にかたよりがあるらしいサイコロについて調べて、その正体を推理してみよう、という話です。
決まった目が出やすいサイコロ?
次の表は、あるサイコロの目のそれぞれについて、出た目とその回数をまとめたものです。出た回数を目ごとに数え、20回振ったところでまとめました。
どんな特徴があるでしょうか?
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
〜20回 | 1 | 4 | 2 | 1 | 7 | 5 |
5、6の目が出る回数が多いように見えます。ですが、サイコロを振った回数(試行回数)が20回と、あまり多くありません。これくらいのかたよりは、偶然起きても不思議ではない気もします。
もっとサイコロを調べるため、さらに、20回ずつ試行しながら、出た目の累計の回数をまとめてみました。
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
〜20回 | 1 | 4 | 2 | 1 | 7 | 5 |
〜40回 | 4 | 6 | 4 | 5 | 11 | 10 |
〜60回 | 5 | 8 | 7 | 6 | 19 | 15 |
〜80回 | 8 | 10 | 10 | 10 | 23 | 19 |
〜100回 | 9 | 14 | 11 | 15 | 26 | 25 |
5、6が多いことが、かなりはっきりしてきました。何か仕掛けがありそうです。
普通のサイコロの目の出方
謎のサイコロについて調べる前に、そもそも普通のサイコロなら、どんなふうに目が出るか確認しておきましょう。
サイコロは、立方体(正六面体)で、それぞれの面には1から6の数が割り当てられています。言い換えると、6種類の目があります。立方体なので、サイコロのどの目が出るかの確率に差はなく、どの目も1/6の確率で出るはずです。
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
確率 | 1/6
0.166… |
1/6
0.166… |
1/6
0.166… |
1/6
0.166… |
1/6
0.166… |
1/6
0.166… |
もし、この通りの確率で目が出るなら、サイコロを30回振ったら、およそ次のような結果になるはずです。30✖️1/6で、5回ですね。
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
出た回数 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 |
実際の回数の表の形に合わせて、予測値を表にしてみましょう。どの目も同じくらい出るはずだと考えられますから、1の目が出る回数を求めた後はコピーで済みます。本来なら、小数点以下の値もありますが、簡単のために端数を四捨五入して、整数部分だけ表示しました。
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
〜20回 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 |
〜40回 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 |
〜60回 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
〜80回 | 13 | 13 | 13 | 13 | 13 | 13 |
〜100回 | 17 | 17 | 17 | 17 | 17 | 17 |
予測値と、実際に出ている目の出方とを比較してみる
予測値の計算方法が確認できたところで、先ほどの「疑わしいサイコロ」のデータについて、調べてみることにします。
次の表には、実際にその目が出た回数(実績値)と、その目が出ると予測される回数(予測値)を”/”で区切って並べ、そしてカッコの中に実績値から予測値を引いた値を示しました。
実績値/予測値 (実績値-予測値)
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
〜20回 | 1/3 (-2) | 4/3 (1) | 2/3 (-1) | 1/3 (-2) | 7/3 (4) | 5/3 (2) |
〜40回 | 4/7 (-3) | 6/7 (-1) | 4/7 (-3) | 5/7 (-2) | 11/7 (4) | 10/7 (3) |
〜60回 | 5/10 (-5) | 8/10 (-2) | 7/10 (-3) | 6/10 (-4) | 19/10 (9) | 15/10 (5) |
〜80回 | 8/13 (-5) | 10/13 (-3) | 10/13 (-3) | 10/13 (-3) | 23/13 (10) | 19/13 (6) |
〜100回 | 9/17 (-8) | 14/17 (-3) | 11/17 (-6) | 15/17 (-2) | 26/17 (9) | 25/17 (8) |
「20回のサイコロを振る」試行を2回繰り返したあたり、つまり40回振ったあたりで、かなり傾向がはっきりしてきています。
1、2、3、4の目は、「〜40回目」以降、カッコの中の値がマイナスのまま、正の値になることがありません。つまり、実績の回数が、予測の回数より小さいままです。逆に、5、6の目は、最初からずっと、実績の回数が予測の回数を上回っています。
これはどんな「サイコロ」?
次に、これがどんな仕掛けのサイコロなのか、振った回数に対する比率をとって、表にしてみましょう。およその傾向をつかむため、100回までの結果を計算してみました。小数以下第2位まで示します。
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
〜100回目 | 0.09 | 0.14 | 0.11 | 0.15 | 0.26 | 0.25 |
6つの目の比率をみてみましょう。
予測の回数より実際の回数が下回っていた、1、2、3、4の目は、0.09から0.15の範囲になっています。
一方、5、6の目は、0.26、0.25の値になっています。
1、2、3、4の目に比べて、5、6の目の方が、倍ほど出やすいサイコロになっていることがわかりました。
こんな結果を出すサイコロは、どんなサイコロでしょうか?
どんな形をしていると思いますか?
種明かし:このサイコロは
実は、ここまでに見てきたデータは、下の画像の「サイコロ」を使って作りました。
このサイコロは、正八面体で、目は1から8まであります。
このサイコロを振って、7が出たら5として、8が出たら6として扱いました。
つまり、「5の出た回数と、7の出た回数の合計」を「5の出た回数」に、「6の出た回数と、8の出た回数の合計」を「6の出た回数」にしたのでした。
「謎のサイコロ」の、理論上の確率は次のとおりです。
サイコロの目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5(5と7) | 6(6と8) |
理論上の確率 | 1/8
0.125 |
1/8
0.125 |
1/8
0.125 |
1/8
0.125 |
1/8 + 1/8
0.25 |
1/8 + 1/8
0.25 |
正多面体には、正六面体、正八面体のほかに、正四面体、正十二面体、正二十面体の5種類があり、それぞれ面に数を割り当てたサイコロがあります。ボードゲームなどを扱っているゲームショップや、百円ショップなどでも目にすることがあります。
ぜひ、正多面体サイコロを手に入れて、試してみてください。
最後に
この記事では100回までのデータを使いましたが、記事の準備にあたって、300回サイコロを振りました。
途中、「3と5、それと1、2があんまり出ないなあ…」と思いました。
しかし、実際にデータを集計してみると、1から8までの目の出方に、大きな偏りはありませんでした。つくづく、人間の体感というのはあまり当てにならないものです。
体感や、直観は大切ですが、体感や直観に頼りすぎると、非科学的になります。データの分析を学んで、科学的にデータを見られるようになりましょう。